はじめに
分子系統解析は、遺伝子配列を比較することで生物の進化的関係を明らかにする重要な手法です。その代表的なツールが MEGA(Molecular Evolutionary Genetics Analysis) です。最新バージョン MEGA12 では、計算速度や精度の向上に加え、直感的な操作性が強化されました。本記事では 「初心者でも迷わず系統樹を作成できる」 をコンセプトに、MEGA12を用いた系統樹構築の手順を詳しく解説します。
1. MEGA12の新機能と改善点
MEGA12では以下の点が強化されています:
- Tree Explorerの操作性向上:ツリーの拡大縮小やレイアウト調整が直感的に
- DrPhylo統合:系統関係の信頼性チェック機能を搭載
- 適応的ブートストラップ法の導入:最尤法解析の効率化
- 64ビット対応の最適化:大規模データ処理の高速化
💡 ダウンロードリンク:MEGA公式サイト
2. 系統樹構築の手順(初心者向け完全ガイド)
Step 1:ソフトウェアのインストール
- MEGA公式サイトからMEGA12をダウンロード
※2025/2/22時点でMEGA12はWindowsのみ対応しています - インストーラーを実行
- Java Runtime Environment(JRE) のインストールが必要
Step 2:データの準備
系統樹作成には適切な配列データが必要です。
- 推奨フォーマット:FASTA(
.fasta
拡張子) - 文字コード:ASCII文字のみ
- 配列長:全配列が同じ長さに調整されていること
- 欠損データ:
N
または-
で表記
💡 サンプルデータ:HIV_sequences.fasta
📌 操作手順
File > Open
でFASTAファイルを読み込みSequence Data Explorer
で配列方向を統一(Edit > Reverse Complement
)Align > Edit/Build Alignment
から Muscle でアラインメント実行- アライメント結果を
.mas
形式で保存
✅ 品質チェックポイント
- 保存領域の コドンフレームが一致 しているか
- ギャップ率が30%以下 であるか
Step 3:最適モデルの選択
適切な進化モデルを選ぶことで、より正確な系統樹が得られます。
📌 操作手順
Models > Find Best DNA/Protein Models(ML)
を選択- モデル評価指標として BIC(ベイズ情報量規準) を採用
- ガンマ分布サイト数を 4カテゴリ に設定
📝 例:HIV配列データのモデル選択
モデル | lnL | BIC | 選択確率 |
---|---|---|---|
GTR+G | -1502 | 3120 | 0.78 |
HKY+G | -1510 | 3145 | 0.15 |
K2+G | -1520 | 3168 | 0.07 |
📌 選択のポイント
- BICが最小のモデル を選ぶ(例では GTR+G)
- ブートストラップの支持率 が向上するモデルを選択
Step 4:系統樹の構築
📌 操作手順
Phylogeny > Construct/Test Maximum Likelihood Tree
を選択- 最適モデル(例:GTR+G) を適用
- ブートストラップ反復数を1000回 に設定
- 初期樹構築 に CNI法(Close-Neighbor-Interchange) を採用
- 枝長最適化 に SPR法(Subtree-Pruning-Regrafting) を適用
✅ 系統樹の解釈
- 枝長:置換数/サイトを表す
- ブートストラップ値:70%以上を信頼できるクレードと判断
- 外群の選択:進化的に遠縁な配列を指定(例:SIV配列)
3. トラブルシューティングと最適化のヒント
現象 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
アライメント失敗 | 配列方向が不統一 | Edit > Reverse Complement で統一 |
モデル選択不能 | 配列数不足 | 最低4サンプル以上を使用 |
ブートストラップ値が低い | 進化信号が弱い | 保存的な領域を選択 |
計算時間が長い | パラメータ設定不適切 | FastMEを適用 し、近似計算を優先 |
💡 大規模データ(500配列以上)の場合
- Neighbor-Joining法を優先
Preferences > Parallel Processing
で CPUコア数を増やす
4. 高度な解析手法(分子時計解析・祖先配列推定・選択圧解析)
① 分子時計解析
📌 Clock > Compute Timetree
を選択し、分岐年代を推定。
② 祖先配列推定
📌 Ancestral Sequence
ツールを起動し、尤度最大の祖先塩基を推定。
③ 選択圧解析
📌 Selection > CodeML Analysis
を実行し、dN/dS比
を計算。
まとめ
MEGA12を用いた系統樹構築は、適切なデータ処理とパラメータ設定がカギです。本記事の手順を参考に、精度の高い系統樹を作成しましょう!
🚀 今すぐMEGA12をダウンロード! 👉 MEGA公式サイト
<関連記事>
<広告>